「INCI」や「化粧品成分表示名称リスト」と「化粧品成分」について
日本で良く知られている化粧品の成分名表示方法として、アメリカの「PCPC」による「INCI名」と、「日本化粧品工業連合会」による「化粧品の成分表示名称リスト」があります。これら化粧品成分名称の持つ意味と「化粧品の成分」について解説します。
化粧品で表示されている成分名は、化粧品を製造している各社が、「その成分の正式な化学名」であったり、「商品名」であったり、「成分の一般名」であったりと、各々独自に成分名を設けることで、化学的には全く同じ成分であるにもかかわらず、その名称が複数存在してしまう場合があり得ます。
化学的に全く同じ成分に複数の成分名が存在すると、この成分名が一体何であるのかと言うことの共通認識を得ることが困難になってしまうため、ある一つの成分の名称を一つに規定する目的で、アメリカ合衆国の業界団体「Personal Care Products Council(PCPC)」が制定した「化粧品成分の国際共通表示名称」、それが「INCI名」になります。
「INCI」とはInternational Nomenclature of Cosmetic Ingredientsの略で、「インキ」と読み、「INCI名」は、事実上の化粧品成分の国際的表示名となっています。
INCI名は、ある成分について一つの名称をPCPCに申請することで、審査・登録がなされます。
そして、INCI名の登録の際には、成分の製造法や化学的構成を規定する世界共通の「CASナンバー」などの情報も一緒に登録されますので、ある成分を一つのINCI名称だけで化学的に明確に識別することが可能になります。
化粧品で汎用になっているような成分は、既にINCI名が登録されていることが多く、世界中で製造・販売されている化粧品は、おおむねINCI名に則った配合成分の表示がされている現状がありますが、ジェルネイルの様な従来の化粧品とは大きく異なる成分で作られている製品に関しては、その成分名のINCI名登録は途上にあるのが現状です。
日本においても、世界での「INCI名」と同じく、化粧品成分の統一名称を規定する目的で運用されているのが、日本の化粧品製造業者の業界団体である「日本化粧品工業連合会(粧工連)」の「化粧品の成分表示名称リスト」です。
粧工連の「化粧品の成分表示名称リスト」も、PCPCの「INCI名」と同じく申請によって名称登録されるシステムになっていますが、申請する際に当該成分の「INCI名」もあわせて申請する必要がありますので、先にINCI名を登録してからでないと、「化粧品成分表示名称リスト」に新規で登録申請することは出来ません。
「化粧品の成分表示名称リスト」独自の特徴の一つに、2001年3月以前の、化粧品製造に「国の審査と許可」が必要であった時代の化粧品基準である「化粧品種別許可基準(平成11年3月24日付厚生省通知)」に収載されていた成分名称が、リストの運用開始時に既に登録されており、それにプラスして、新規に申請された成分名称が追加登録されていることがあげられます。
「薬機法」では、「化粧品に配合されている全成分を表示する」義務があることが明示されておりますが、「どのような成分名で表記するか」についての規定はありません。
現在、化粧品配合成分については、化粧品基準で決められた「配合禁止成分」「配合量制限成分」「タール色素」以外については自由化されており、配合した成分の名称については化粧品製造事業者が「任意」で定め、その全成分を表示することとなっています。
とは言え、化学的に同一の成分の名称を、化粧品製造の各社ごとに自由に命名されてしまうと、同一成分に複数の違う呼称があることとなり、成分の識別に不都合が多くなることも予想されるため、「『化粧品成分表示名称リスト』に既に登録されている成分に付いては、その名称を使用することが望ましい」とはされていますが、法的な拘束力はありません。
ジェルネイルの成分について、
「『ウレタンアクリレートオリゴマー』などの『INCI』や『化粧品成分表示名称リスト』に登録の無い成分名を化粧品に全成分表示することは、薬機法違反となる」
などの解説が散見されますが、これは誤りです。
「INCI名」や「化粧品成分表示名称リストにある成分名」は、「薬機法で法的に表示することを義務付けられた成分名」ではありませんので、「INCI名」や「化粧品成分表示名称リスト」に無い成分名が全成分に表示されていたとしても法的に何ら問題はありません。
「INCI登録済の化粧品成分」「化粧品の成分表示名称リスト登録済の化粧品成分」などと表記があれば、まるで化粧品用の安全性が担保された成分であるかのような響きがあります。
確かに、既に世に出回っている化粧品に使われている成分の多くが、『INCI』や、『化粧品成分表示名称リスト』に登録されているのは事実なので、「『INCI』や『化粧品成分表示名称リスト』に名称登録されている成分は全て安全である」と言う「錯誤」が生まれているのかもしれません。
しかし、「『INCI』や『化粧品成分表示名称リスト』に名称登録されている成分」と「その成分の安全性」は、実は全く関係がありません。
「INCI」や、「化粧品成分表示名称リスト」に成分名称を登録するに当たって、「安全な成分であることの審査」は無く、化粧品製造業者側で「安全な成分であることの証明」を提出する義務もありません。
「INCI」に登録されている成分名の場合は世界中で、「化粧品成分表示名称リスト」に登録されている成分名の場合は日本国内で、
「個別の化粧品成分を、『一つの成分名』で化学的に識別出来る」
と言う機能があるだけですので、成分名登録の有無と、配合成分の安全性とは「全く無関係」であることに留意しなくてはいけません。
例えば、「INCI名登録がある成分でも、薬機法の化粧品基準に合致しない」と言うことがあり得ます。
ジェルネイルの配合成分の安全性について本当に大切なことは、「最低基準」として薬機法などの法令を遵守した上で、ジェルネイル製造会社自身が配合成分の安全性について深く吟味出来る能力を培い、お客様の身体に最も安全性の高い成分を、処方開発の最優先とすることが出来るかと言う所にあると考えております。
「INCI」名称は、国際的な化粧品成分の統一名称として、世界的に運用されています。
日本では、薬機法で成分名称に「INCI」名を用いなくてはならないと言う決まりはありませんが、世界的には、中国など化粧品の成分名称に「INCI」名称を使用しなくてはならないと言う規定がある国がありますので、そのような国向けに製品を輸出し、当該国で化粧品登録等を行う場合には「INCI」名があることが必須となります。
また、当然のことですが、ジェルネイル製品を構成する「全て」の成分名称が「INCI」名登録されていないことには、「INCI」名が化粧品登録等に必須の国向けに輸出し、化粧品登録等をすることが出来ないのは言うまでもありません。
「主要成分がINCI名登録済」などの「全成分の内、一部の成分のみをINCI名登録している」や「全成分の内、一部の成分がINCI名登録されていない」ジェルネイル製品では、INCI名が必須の国向けに輸出しても、化粧品登録等を行うことが出来ませんので、紛らわしい表記には注意が必要です。
ジェルネイルで使われている原材料について、「工業用グレード」と「化粧品グレード」と言う表記を見かけることがありますが、結論から言えば、「化粧品」として売られている製品の成分は、全て「化粧品グレード」であると言うのが答えになります。
なぜなら、薬機法の「化粧品基準」に合致した成分であれば、全て「化粧品」に使用することが法的に認められていますので、それを「化粧品グレード」の成分と定義した場合、化粧品基準から外れた「工業用グレード」の成分を使用して「化粧品」を製造することは出来ないからです。
ただし、一部に原材料メーカー自身が化粧品基準に準拠させた原材料を「化粧品グレードの原材料」として販売している例があり、それを「化粧品グレード」の成分と称するのは間違いではありません。
しかし、それ以外の原材料を「工業用グレード」などと呼んで、あたかも化粧品基準に合致していない成分であるかのような印象を与えるのは誤解を招く表現です。
実際は、原材料メーカーが化粧品基準に準拠させて製造している成分も、そうでない成分も、
①全て化粧品製造元が成分の内容を吟味し
②「化粧品基準に合致している」ことを確認した上で
③責任を負って製造した製品
それを「化粧品」として販売しています。
●2020年3月11日 「INCI名」に完全対応した、「プレミアムジェル・グローバル」各製品を製造・販売開始しました
●2020年4月23日 「INCI名」について – なぜ日本のジェルネイル製品には全成分表示で「INCI名」表記が少ないのか①